活動自粛のきっかけ

事件は、ぼくたちが修学旅行に行っている間に起きました。
いまどきの公立高校の生徒がどこに修学旅行に行っているのかは知らないけど、この当時は、ごく一部の私立高校を除いて修学旅行は当然のように国内でした。首都圏の高校だとその7割以上が「奈良・京都」だったんじゃないかな?ぼくたちも4泊くらいの日程で奈良・京都に行っていたのですが、その終盤に不穏なニュースが飛び込んできたんです。

「1年生のフォーク部員が教員室に押し入って、警備会社が来る騒ぎになったらしい」

はぁ?!何だ、その時代錯誤な響きは……。

旅行終了後、緊急部会が開かれました。で、そこで顧問の教師から顛末を聞かされた訳です。

うちの部は、教員室の奥にある書庫にドラムセットやアンプを置かせてもらっており、練習コマを取ったバンドが放課後に楽器を教室に運び、午後6時の定時制部の授業開始までに練習を終えて楽器を書庫に返すという形で活動してました。教師たちの中には、教室でバンドの練習をすること自体に眉をひそめる人も多く、返却時間の取り決めや書庫の戸締りを忘れるとここぞとばかり攻撃されるため、部員一同ものすごく気を遣っていた訳です(後から知った話ですが、顧問教師がかなりがんばって守ってくれていたというのもあったようです)。

ところが、ある秋の夕方、練習に熱中した1年生バンドが時間を超過してしまいました。通常なら定時制部からの抗議で練習終了・片付けとなるのですが、この日は定時制部の授業が無く、これ幸いと練習を続けていたところ、教員室そのものが施錠される時間になってしまった訳です(定時制部の授業が無いためみんな帰宅した)。
楽器を出しっ放しにして怒られることと教員室の鍵をこじ開けることを天秤に掛けた結果、彼らは、鍵をこじ開けることを選んだ訳です。

……結果、半年間の活動自粛が決まりました。